R子は高校2年生。クラスの中ではおとなしいほうだ。
友達も多くない。休憩時間はひとりでいること多い。
口数が少なく、授業の中やホームルームで意見を言うこと
もほとんどない。
どこかみんなに溶け込むことのできないような、
みんなからひいているような感じがある。

だが、存在感が薄いかというとそれも少し違うのだ。
彼女にはある種の「存在感」がある。
確かに口数は少なく目立たないのではあるが、彼女に注意を向けてみると、
彼女が落ち着きを持ってそこにいるのではないことがすぐに分かる。
おっとりしているために周りのペースについていくことができず
一人でいるというのではないし、
周りをよせつけない傲慢さとか、孤高な感じがあるわけでもない。

彼女はいつもそわそわしていて、
彼女と一緒にいると周囲にいる人もなんとなく落ち着かない気持ちになる。
実は、彼女はいつも皆に自分の一挙手一投足を見られている気がしているのだ。
そのため、いつも緊張してこわばっているのだが、
そのこわばりに屈することを拒むかのように、
動きをやめたらそこに固定されてしまうとでも思っているかのように、
彼女は常に落ち着かずそわそわと何かをしている。
この落ち着きのなさは、彼女の雰囲気の特徴と言えるだろう。
彼女は、じっとしていることができない。
休憩時間には身体を伸ばしたくなって、背伸びをしたり、首筋を左右に伸ばしたり、
手指の関節をマッサージしたりする。
長い休憩の時間には、必ず校内か校庭を歩き回っている…特に目的もなく。

さっきの休憩時間中、珍しくR子は友達に話しかけられた。
前の授業で珍しくR子が発言をしたのだが、意味が捕らえにくかったので、
その内容についてもう少し意見を聞きたいというのだった。

言葉少なに返答する彼女の視線は、落ち着きなく定まらない。
相手の目を一瞬見ると、視線はすぐに相手の足下に落ちる。
一瞬小首を傾げる。また顔を上げて今度は黒板のほうを見る。瞬きをする。
顔にかかる前髪を耳にかける。また視線を下に落とす。言いたいことはうまく言えない。
少し焦って汗をかいてくる。言葉がうまく出てこない…声がかすれる。
思考が四角い容器に収まってしまってうまく加工できず、出てこないという感じだ。
友達は、オッケー、ありがとう、と言って、行ってしまった。
R子は、がっかりした気持ちになって深呼吸をした。

R子の気持ちは、常に家庭での心配事で占められているのだ。

父は2年前に前の会社を退職して以来、アルコールをやめられなくなっている。
退職、とは言っても事実上は「解雇」に近い。
今はやりの言葉で言えば「パワハラ」だろう。
それ以前から会社ではうまくいっていなかったようで、お酒を飲んで帰宅して、
意味不明の言葉や、上司の悪口や愚痴を口にするようなことはあった。

しかし、会社を退職して帰宅した日の父の様子を、R子は未だに忘れることはできない。
父は、帰ってくるなり無言で、キッチンで食事の準備をしていた母の手から
サラダボウルを奪いとり食器棚に向かって投げつけたのだ。
R子と妹の目の前で…。

父はその後別の会社で働くようにはなってはいるが、
アルコールの量は徐々に増えているし、今でもときどき物を壁に向かって投げつけたり、母に暴力を振るいそうになることがある。

母は、中学・高校・大学とこれから娘達に教育費がかかっていくことを考えて
パートの量を以前より増やしているが、
仕事と家事の両立、父や娘達の心配で、心身ともに限界に近づいている。
R子も2年生になってからアルバイトを始めるようになったが、
そのため大学受験の勉強ははかどっていない。
妹は中学3年生で数ヵ月後の高校受験を控え、ナーバスになっている…。

今日はアルバイトがない日なので、学校から帰って勉強を始めた。
喉が渇きやすくて、勉強するときは必ずミルクを用意している。
R子の一番好きなものだ。
全般的に冷たい飲み物を飲みたいと思うのだが、
実際に飲むと調子が悪くなるので、飲み物は温かくして少しずつ飲むようにしている。
温かくて乾燥した空気に中にいるときが一番心地よく、寒くて湿った天候が嫌いだ。
とにかく、温かいもので体調がよくなるようだ。

R子の心配は一日中続くが、夕方以降、特に夜になると大きくなる。
父のこと、母のこと、妹のこと、これからの自分のこと…。
いつか自分は殺されるのではないだろうかと思うことさえある。
R子は、父と、父をここまでにしてしまったアルコールをひどく憎んでいる。
将来結婚することになっても、お酒を飲む人とは絶対に結婚したくないと思っている。

その夜、R子は夢を見た。
茫々とした荒地を当てもなく、いつまでもさまよう夢だった。

Rhus-t.の原料は蔦漆(つたうるし)です。そのため、漆かぶれのような状態、帯状疱疹の最も代表的なレメディーとして使用されます。
ちょっと落ち着きがなくてなかなかリラックスできない。ある種の堅さ、こわばりのようなものがあります。
Rhus-t.は、ねんざ、筋違い、リューマチ、水疱瘡や帯状疱疹などに利用されます。
休んでじっとしていると体が固くなって痛みを覚えるので、常にいつもからだを動かそうとします。
いつも不安を抱えていて、夜になると特にひどくなります。