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ドクターズ座談会

ドクターズ座談会

臨床の現場でのホメオパシーの現状とは

ハーネマンアカデミーでは、この夏、ドクターのためのメディカルコースを再スタートします。なぜ今メディカルコースが必要なのか、医療現場でのホメオパシーの現状など、当校で学ぶドクターたちを迎えて行われた座談会の様子をご紹介します。

医師が真のPhysicianを目指すメディカルコースを再スタート。

永松先生今日はメディカルコース開講にあたって、当校で学んでいる医師のみなさんと、医学会の現状とホメオパシーについてお話しする機会をいただきました。

今年度から、以前行っていたメディカルコースを復活することにしたわけですが、ホメオパシーをどうやって日本に健全な形で定着させていくかというときに、最も重要な鍵になるのが、Physician、即ち「人間存在の道理に基づいた真の医師」の育成だと思います。
そこには二つの方法、流れがあると思います。1つは、私のように医療的な資格を持っていない一般の方たちや、看護師、薬剤師、柔復師、鍼灸師など、医師以外の医療従事者が、真のPhysicianに向かっていくという流れです。
そしてもう1つは、医師、歯科医師、獣医師で、もともとホメオパシーに興味があり、なんらかそれまでの通常の医療にどこか疑問を感じていた医師が、真のPhysicianになっていくという流れです。しかしその時には、それまでの自分の殻や思い込みをひとつひとつはがしていく作業が必要となり、それを最初から一般の方たちと一緒にやっていくのは難しいのではないか、ドクターという「仲間」のなかでそれをやりながら、後に合流していく方が自然ではないかという主旨でつくったのが以前のメディカルコースです。今でもその意味はあると思っていますが、ここにきて、わざわざ分ける必要もないのではないかと感じるようになりました。

二つの流れがあると申しましたが、特に医師免許を持っている人に、真のPhysicianになってもらわなければならない、ある意味生まれ変わってもらわなければならない、それをより進めなければいけない、と強く決意しました。
本来はこれが本命なんです。本来ホメオパシー、人間の道理に基づいた医療は医師がやらなければならないものなんです。それが医師というものであり、Physicianなんですから。しかし「医師免許取得者」が医師でないと申しますか、Physicianになる訓練を受けていない、というところに最も根幹的な問題があるのです。

医師のみを対象にしたホメオパシー医学会という団体がありますが、医師がPhysicianになっていくことを、医学会だけに任せていたのでは難しい。残念なことにそこでは最もホメオパシー的でないような状況が続いているからです。医師がPhysicianになっていく道を研修するのではなく、単に「医師免許取得者」を変革しないままで特別扱いし、「医師免許取得者」以外を排除するための「圧力団体」のようになっています。
一応そこで短期間のホメオパシー研修を受けたけれども、事実上何もできない、ある種「難民」になっている人がどんどん増えています。それは当然です。何年もかかる研修を、たった一週間程度の研修でできるわけがありませんから。それは医学会だけの問題ではありませんが。 ホメオパシーをちゃんと学んでみたいという高い志を本来持っていた人たちを、その原点に引き戻したい、そういう状況を捨ててはおけない、我々としてもそこに力を傾注していきたいという強い思いがあります。

そこで、夏休みに行う集中コースからスタートして、スーパーバイズ付きのセッションを2年生から行う『メディカルコース』をスタートします。このコースでは、勉強したはずなのに、なぜうまくいかないのかを含めて、ある程度のことができるようなカリキュラムを5日間やり、それをきっかけにして、本格的に4年制のコースに入ってもらえたらと思っています。

「現代医学から一度も離れずホメオパシーを学ぶ」というのは、
本物のホメオパシーを学びPhysicianに生まれ変わるチャンスを失うこと

永松先生ここにいらっしゃるみなさんは、医療の現場にいらっしゃって、ホメオパシーを学ばれている方ばかりです。潜在的にホメオパシーに興味のある医療従事者、興味があっても途中になっている人たちに向けて、メッセージを発信してもらえたらと思います。

4年前に医学会の基礎コースをうけて、はじめはこちらと並行していました。あまりの違いにびっくりしたのは、オルガノンとか、ホメオパシーの歴史とか、ハーネマンの話とか、基本に全くふれられなかったのが、えっ!という感じで。そこを素通りして、現代医学のセミナーと同じように、メカニズムやデータの話から入っていったのが、もったいないというか。せっかく一番興味があって楽しいところをなぜやらないのかなというのが正直なところでした。

それと、言われて驚いたのは、「あなたがたはドクターなんだから、そこから離れる必要はない」と。その中からホメオパシーをやって、だめならすぐ戻ればいいという話をされたので、それでは本当のホメオパシーができないんじゃないかと思って。もちろん現代医学を否定するわけではなくて、いったん忘れてゼロから勉強して、もう一回やっぱり現代医学も必要だとわかってやるならいいけれど、初めてきた人に、「今までの医学を離れる必要はないですよ。ホメオパシーのいいところをとってやってください」と言われると、そういう考えが流れているなと感じて嫌になっちゃったというか(笑)。年次大会も、最初は一生懸命やっている印象があったんですけど、聞いた話では、最近はだんだん変な自信のようなものに変わってきていて、レパートリーでこのルーブリックスで、このレメディー、って表面的な症状だけでぽんぽんとやっているようで、それではハーネマン・アカデミーで日々みている色々な先生のケース分析などとは程遠くて、表面的なところしかとれていないのではないかという感じがしました。

「みなさんは今までのパラダイムを変えなくていいんですよ」というのは、ある種、医師にはウケるんです。それは、今までの枠組みを壊さなきゃいけないんじゃないかという不安を、ある種「救ってくれる」んだけれど、それによってホメオパシーをやっていくせっかくのチャンスがなくなっていくというか。あれは非常にもっともらしい、すごく大きな毒のようなものかなと思っています。でもそういう言葉が良かったという人は案外いるんです。すごく残念なことだし、そんなことではホメオパシーをやる意味はないですよね。それこそ一冊本を読んで、ちょっとレメディーを試してみる、その程度でいいようなことになっちゃうので。今のお話で、最初の大事な話をしないのにはびっくりしたんですが、その程度は本に出てるという意味なのでしょうか。

小泉さんケントはスウェーデンボルグの影響をすごく受けているので、ああいう神秘主義的なことは今は否定されているというので終わってしまうんです。その中にホメオパシーならでのエッセンスや醍醐味や素晴らしさがあるのに、あれは過去の遺物であり、我々は現代のホメオパシーをやればいいんですよみたいなことを言われて。ケントを全部通読してその判断ならまだいいんですが、全然知らない人の前でそれをいってしまうと、我々は過去の巨人に学ぶことなしに、単に今の人がやっているホメオパシーをやればいいんだと勘違いされてしまうんじゃないかと思います。あれだけ素晴らしいものがあるのにそれに全く触れないというのは残念ですね。

永松先生ホメオパシーの学会があること自体は社会的意義が間違いなくあると思います。医学会はもともとこちらで勉強をしていた方々が中心となってはじめられて、その話を受けたときに「それはいいことですね。できることは支援します」と話してしばらく様子をみていました。間違いなく存在意義はあって、要は中身がよくなってもらいたいということが非常に大きな願いです。今のままではどうしようもないので、早く次の段階にいってもらいたいなと思いますが。天井先生は今のお話をうけてどうですか?

天井先生私は小泉さんと違って、2年くらい勉強したあとに医学会に入って、行ったのは一年だけなんですが、お二人と同じような事を感じたんです。あそこに行ってどれくらいの方が、これではいけないと気づけるのか、その気づいた方をきちんとした方向へ導いていくのが難しいかなというのがあって。やはり医者は、医者の世界にいる安心感というか、外に出る恐怖というか、なかなかそこを突破できない人も多いし、そこを突破できるほどの魅力が必要なのかなと思います。

永松先生そうですね。確かに医師は医師だけで、そのなかで十分生きていけるものですから。人の生死を扱っていくので誰にも侵害されませんし、患者さんは無限に存在するわけなので、そこから出て行かなくても独立的にやっていけるということがありますね。そこには多少厚い壁があるのですが、その壁を乗り越えていけるだけの魅力、魅惑というか、やらなきゃいけないんじゃないか、やらざるを得ないという力を、我々もより磨いて、より表現していきたいと思っています。

ホメオパシーと現代医学、2つの流れを共存させて
本物の医療をここから発信したい

永松先生4月から鹿児島で九州校を開校しました。4年生の堂園さんはご主人と鹿児島で堂園メディカルハウスを10年近くやってこられているんですけれども、ここで勉強されてどのようなことをお考えになって、これからどのようなことをされていきたいのか、お話いただけますか。

堂園さん医学部生と話をして知ったのですが、医学部のなかで医者はどうあるべきかとか、健康とは、死とはといったことを話す機会は全くないみたいなんですね。膨大な量の試験対策に追われて、目の前のものをこなしていく。5年生になったら実習におわれ、6年になったらほとんど国家試験の丸暗記対策におわれ、それで医師になったらものすごい権威が与えられるんですよね。鍼も打てるし、薬剤師と同じようなこともできるし。そういうなかでは、医師という資格をもっていれば、なんでも身体のことを知っているんだという感覚を簡単に持ってしまうんです。でもそれは医師自身だけじゃなくて、まわりの教育体制だとか、日本の医学会そのものや大学の医療体制とかにも問題があって、お医者さんもかわいそうだなという感じもしています。

私たちは町の小さな診療所で、自分が良いと思った医療ができるという立場にいます。医局との関係もないし、父の代から漢方や鍼治療を積極的に取り入れてきたという土壌があって、患者さんに本当の意味で健康になっていただくためにはどんなことがいいかと、常々話をしながらやっています。たとえば、アトピーがひどい看護婦さんに食事の面から見直しをしたらすごくよくなったんです。そうすると、アトピーの原因は食事やストレスもあるとか、単なる皮膚の病気ではなくて、心理的な苦痛、肉体的な苦痛、社会的な苦痛もあるとか、それはまったくホスピスの考えと一緒です。街のお医者さんとして苦しんでいる人がいたらなんとかしたいという思いでやっています。

以前、うちの院長自身が鬱病になりまして、3年間トンネルにいるような状況だったんです。そんななか根本的なところから考えてくださる一人の精神科のドクターと、そして永松先生との出会いがあったんですね。そしてうちの医療のなかに、もうひとつ、ホメオパシーが加わりました。

これからは、二つの流れが共存していくような、といってもうちの治療は今の標準的な治療の流れとはちょっとちがった、院長独自の考え方の治療で、もともとかなりホメオパシー的な西洋医学ですので、相反するものが一緒にいるのではなくて、同じような感じのものが2つある感じですけど。どうしても保険治療の枠組みのなかでやらなくてはいけない医療と、そうでない部分を一緒にやっていけたらと。

いま根本の源流のところ、医療を与える側の医師、看護士のところで、きちんとしたものが根付いてほしい。微々たる力でもちゃんとしたものを発信したい、そういう思いでやっています。

永松先生院長がやってらっしゃるホメオパシー的な西洋医療と、メディカルハウスという名前をどうしてつけられたのかというところを少しお話しいただけますか。

堂園さん患者さんとしては、アトピーの方、心療内科的な患者さん、癌の末期の方と、大きく分けて3つのパターンの方がいらっしゃいます。ホメオパシー的な西洋医学というのは、単にお薬を処方するのではなくて、患者さんにとって何が根本的に治癒されるべきなのかを見極めて、ご家族をお呼びしてみんなで家族関係を考えたり、入院中に自分のことを考えたり、日記を書いて院長とやりとりしながら考え方を少し切り替えるとか、そういうことをしています。癌の末期の方のホスピス医療に関しては、たとえ終りの日が近いとしても、いかにその方が納得されて人生をまっとうしていけるか、その日その日、一瞬一瞬をよりよく生きることができるか、それをちょっとでも援助するような医療ですね。そういうQOLの向上です。たとえ最後がきても納得できること。その方が亡くなった後のご家族が、悲しみのなかでもちょっとでも癒されるような医療をやっていきたいなと思っています。

メディカルハウスという名前は、病院のなかに家庭を持ち込みたいということです。病院という枠組みのなかで、患者さんはpatientという役割を押し付けられています。patientには忍耐という意味もありますよね。そういう過ごし方ではなくて、個々の患者さんがご自分のおうちのようにそこにいることができて、単に身体へのケアではなくて、ハード面でも患者さんを癒すことができ、その方を取り巻くご家族、ペット、お孫さんもケアできる、そういうハウスにしたい。もうひとつは、バウハウスのハウスをイメージしていて、ここから新しい医療を発信したいという意味もこめて、メディカルハウスをつくりました。

永松先生そうですね。最初におっしゃった、医学部では死とは何かとか、そういうことについて何も話がないというのはそのとおりだと思うんです。今の医療には死というものがないというか、病院のなかには死はたくさんあるけれども、ただ通り過ぎているだけで、いわゆる医学が及ばない必然的な結果として、敗北的な死があって、死と言うものをまったく経験していない。森有正的にいうと、死というものを「体験」しているだけであって「経験」していないという、極めていびつな状態というものがあって、人間の生というものをきちんと正面から見据えていないというのが問題としてあると思います。

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