学長ブログ
子供への処方と実際のレメディー(1) カルカーブ・リコポディウム
2024-09-09
それでは、子供への処方のお話をしましょう。
子供と大人とは、もちろん本当は明確な「区別」があるわけではなく、グラデーションのように次第に成熟度が高まり、深まってくるので、その端境期(はざかいき)を一般的に「思春期」と呼んでいます。その一つの「象徴」として肉体的には女性は[初潮」、男性は「精通・射精」が大人への入り口とも言えるでしょう。ただ強いて言えば、女性は幼い女の子でも既にそのまま「おんな」であることが多いですが、男の子は幼いときはまだまだ「男の子」であることが多いと思います。
ただ女の子であれ、男の子であれ、小さい頃には既に大人の「原型」は間違いなくあります。ですので、これからお話しすることは、単なる子供の話ではなく、大人の話でもある、ということを頭のどこかに置いておいてください。
レメディの選び方
では子供への処方について少しお話しようと思います。子供への処方は一番関心の深いことのひとつだと思うんですけども、同時に一番難しいことのひとつなんですね。推薦してる本の中に「ホメオパシー治療薬」という本があります。この中に子供の体質治療薬っていうものがありまして、そこに6種類のレメディが載っているんです。で、そこにいろんな特徴が載ってまして、そして大抵、お母さん方でしたらご自分の子供のことはご自分が一番良く知っているから、これを見れば大体判るだろうと思われると思うんです。結構耳にするのはこれを見ると途方にくれるっていう方もいらっしゃるんですね。これもあれも、全部当てはまりそうだって言うわけです。確かにいろんな症状を見ていくといろんなものに当てはまって、なかなか難しいんですね。今までの経験でお話しますと、お母さん達が息子や娘にこれだと選んだレメディは、私が診させていただいて選んだレメディと一致したっていうことはほとんど無いんですね。残念ながら1割あるかないかなんです。たった6種類しかないのに、まあ私が思ってるレメディが必ずしも正しいとは限りませんけれども、少なくとも一致したってことが僅かしかないっていうのはとてもびっくりすることだと思うんです。
これはやはりお母さんていうのは子供に対して、当然ながらいろんな期待とか願望、また不安などがたくさんありますので、ありのままが見えにくいものなんです。あまりに近すぎるとかえって見えにくい。だからある程度距離を置いて見ることが必要なんですけども、でもお母さんの役割っていうのは距離を置いて見ることではありませんよね。お母さんの役割っていうのは子供を愛情をかけて育てていくことですからね。ですから、必ずしもお母さんが子供のレメディをちゃんと判る必要は本当はないわけなんです。ですからそこを悲観される必要は全くないんです。ひとつの方法としては、「これではないだろう」と思うレメディが結構それだったりするので、これではないだろうと思うレメディを試してみるというのもいいかも知れません(笑)。まあ半分冗談なんですけどね。これまでの経験では、お母様がこれかな、あれかなと3種類か4種類おっしゃるけれど、むしろそれ以外のレメディの場合が多いんです。とても不思議なんですけど、いろいろな観点から説明して初めて「ああ、なるほど」ということが多いんです。ですから、自分の思ったレメディを試してみて、もし違っているようなら、このレメディーでは絶対にないだろう!(笑)、と思っていたレメディを試してみるのもひとつの方法かもしれません。それはともかく、この本の中には6つの大きなレメディについて書いてあって、大抵のお子さん達はこの6種類のレメディの中に概ね入るわけなんです。
Calc-carb(カルカーブ)
カルカーブというレメディがあります。これは牡蠣の殻からとったレメディなんです。これは特に「生まれる」っていうことにとても関係のあるレメディなんです。牡蠣というのはとても柔らかい。で、牡蠣は真珠のとれる貝の仲間なんですけども、このカルカーブっていうレメディの中心には何があるかと申しますと、生まれてくるときに、お母さんの羊水の中で極楽極楽という気分であった子供が、この世の中に半ば無理やり押し出されてこなければならない。そしてこの世の中に対応していかなければならない。その時に、いろんな形で自分を守っていかなければならない。内側から、あるいは外側から自分を守っていく、そして一方着実に成長していく、そういうテーマがカルカーブにはあるんです。だいたい生まれてから1歳くらいまでの子供の場合には、そのお子さんがどんなお子さんがどんなお子さんであったとしても、カルカーブ的な状況なもんですから、擬似的に1歳くらいまでのすべての赤ちゃんは、カルカーブだと思ってかまわないです。何があってもカルカーブを処方する、例えば熱があっても、怪我をしても、風邪をひいててもカルカーブを処方するっていうのも良い方法なんです。とても簡単ですよね。
カルカーブだけ持ってれば大抵のことは対処できる。もしもそれで良くならなかったら違うことを考えるのもいいんですけども、9割くらいのことはこのカルカーブでうまくいきます。カルカーブの子供は、ちょうど牡蠣の身のように色が白い、ぽっちゃりとした、絞ったら水が出そうな感じな(笑)、少し水ぶくれ的な感じのある人が多いんですけども。非常にマイペースと申しますか、自分のペースできちんきちんとやっていく、そんな性格の人が多いです。カルカーブの中心は「マイペース」です。非常に着実に成長していく。マイペースなので親から見ますと結構のろまに見えたりするんですけど、子供に対して「のろま!」と叱責する、これは絶対禁物なんです。というのは子供は自分はのろまだとは決して思っていなくて、ひとつの事を確実にやっていこうとしているだけなんですけども、それをのろまだとか、「早くしなさい」と言われると結構カッと来るんですね。もう一度ひねくれると、絶対にやらない!と固く決意する、ということが良く起こります。非常にその後いろんな問題が起こりやすいんです。カルカーブの子供にカルカーブを与えると、ある意味マイペースなのは変わらないんですが、とても「上手なマイペース」にやれるようになります。これは親から見ても、のろまっていう感じではなくなってきて、安心して着実にいろんなことをこなしていく子供になりやすいです。
Lycopodium(リコポディウム【ラテン語読み】 ライコポディウム【英語読み】)
リコポディウムの中心は「非常に自信がない」っていうことなんです。非常に自信がなくて臆病なんですけども、子供のころは割りと臆病な感じがそのまま出ているんですけど、人間は臆病なままでいるっていうのができないというか、代償作用というか虚勢を張るようになるんですね。で、外側から見ると傲慢に見える。特に大人なんかには多いんですけどね。リコポディウムの子供は基本的に自信がない。人前で何かするのを非常に恐れたりします。ですが基本的に能力はとても高い。何故かと申しますと、自信がないので努力をします。努力をすると人間伸びますからね、ですから結構能力が高い人が多いんです。虚勢を張ったりするわけですが、内側では心は打ち震えているという感じです。
中島敦という古代中国に通じた優れた作家が「山月記」という短編小説を書かれました。リコポディウムそのままの人物が主人公なのですが、自信の無さによって傲慢な振る舞いになってしまい、ついには虎になってしまった男の話なのですが、「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」という表現が出てきます。そのままピッタリの表現だと思います。
大きな特徴としては、お腹にガスが溜まりやすい。胃腸というか消化器系が弱いんですね。いろんな心配なところがストレートに胃に来ます。リコポディウムというのは、植物のコケスギなんです。ヒカゲノカヅラっていいますけど。これは昔は高さ30メートル位にもなった巨大なものだったんですけど、今の石炭の材料はこのコケスギだと言われてますけど、今はほんとに小さいというか、1メートルくらいのものなんです。擬人法的にいうと、大きな杉になるはずが、途中でいじけてコケになっちゃったというふうに、半分冗談ぽく言われるんですが、そのような心持ちっていうのがリコポディウムなんです。このリコポディウムの人というのは、努力もしますし、大きくなって先生と呼ばれる人になりやすいですね。学校の先生もそうですが、弁護士の先生とか、国会議員の先生とか。先生と呼ばれる人というのは、割と態度もでかいし、傲慢ですよね。だけど心の中では臆病だったりするわけです。まあ、うまく成長すると非常にいろんなことをわきまえた、大きな会社の社長になったりとか立派な人になることもあるんですけど、なかなか傲慢な感じがして、人から誤解されることもあります。
それでは次回は残り4つのレメディーのうち2つのレメディーについてお話ししましょう。
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